経費計上の大原則:適格性の三本柱
全ての経費は、この3つの「適格性の三本柱」を満たす必要があります。一つでも欠ければ補助対象外です。
1. 目的の明確性
作成した事業計画の遂行(販路開拓等のための取組、あるいは、販路開拓等の取組とあわせて行う業務効率化)に必要不可欠な経費であると、論理的に説明できること。
2. 時期の正当性
「交付決定日」以降に発注・契約・購入し、補助事業期間内に支払いが完了すること。
3. 検証可能性
見積書、契約書、請求書、支払証憑など、客観的な証拠書類で金額を確認できること。
経費区分別 詳細ガイド&チェックリスト
ウェブサイト関連費を除く、主な経費区分の対象・対象外の境界線と、専門家の視点からの注意点を解説します。➂ウェブ関連費に関しては既に解説記事を掲載しております。そちらをご確認下さい。
① 機械装置等費
事業計画の遂行(販路開拓等のための取組、あるいは、販路開拓等の取組とあわせて行う業務効率化)に不可欠な製造装置や設備等の購入費用です。
⭕️ 補助対象となる経費
- 生産性向上や新サービス提供に必要な製造装置、厨房機器
- 特定顧客層の集客力向上に繋がる設備・備品
❌ 補助対象とならない経費
- 汎用性が高いもの(PC、タブレット、一般的な車両等)
- 単なる老朽化による取替え更新
専門家によるコンプライアンス・ノート
【新品の場合】単価50万円(税抜)以上は「処分制限財産」となり、補助事業終了後も一定期間(通常5年)は売却等が制限されます。また、1件あたり100万円(税込)超の機械装置等を購入する場合、価格の妥当性を確認するため、2者以上からの見積が必要です。
【中古品の場合の厳格なルール】中古品の購入は、以下の全ての条件を満たす場合にのみ補助対象となります。
- 価格条件: 購入単価が50万円(税抜)未満であること。50万円以上のものを分割して購入することは認められません。
- 見積条件: 金額にかかわらず、必ず2者以上の中古品販売事業者から同等品の見積書を取得することが必須です(個人間売買やオークションは対象外)。これらの見積書は、実績報告時に必ず添付する必要があります。
- 状態・修理: 購入後の修理費用は補助対象外です。また、故障等で使用できなかった場合も対象外となります。
② 広報費
計画上の新商品・サービスを宣伝広告するための費用です。
⭕️ 補助対象となる経費
- 新商品・サービスを紹介するチラシ、ポスター、パンフレット
- 販路開拓を目的とした看板、新聞・雑誌広告
❌ 補助対象とならない経費
- 単なる会社案内パンフレット、求人広告、名刺
- 補助事業期間中に配布・設置されなかった未使用分
専門家によるコンプライアンス・ノート
実績報告の際には、単に印刷しただけでなく、実際に配布・設置したことを証明する証拠(ポスティング業者の報告書、配布先リスト等)の提出が求められます。「配布」されて初めて経費として認められます。
④ 展示会等出展費
販路開拓を目的とした展示会や商談会への参加費用です。
⭕️ 補助対象となる経費
- 展示会・商談会の出展料、ブース設営・装飾費用
- 展示品の運搬費用、海外展示会での通訳・翻訳料
❌ 補助対象とならない経費
- 販売のみを目的としたイベント(即売会など)への出展
- 優劣を競うコンテストや審査会への参加費用
- 出展に伴う交通費・宿泊費(→⑤旅費で計上)
専門家によるコンプライアンス・ノート
この経費区分は「時期の正当性」の原則で唯一の重要な例外があり、展示会への「出展申込み」自体は交付決定前でも可能です。しかし、その場合でも、出展料の「請求書の発行日」および「支払日」は、必ず交付決定日以降でなければなりません。
⑤ 旅費
補助事業計画に基づく販路開拓(展示会出展など)を行うための移動・宿泊費用です。
⭕️ 補助対象となる経費
- 公共交通機関(電車、新幹線(普通席)、飛行機(エコノミー))の往復運賃
- 宿泊費(食事代を含まない実費、社会通念上妥当な金額)
❌ 補助対象とならない経費
- 自動車利用に関する一切の費用(ガソリン代、高速代、レンタカー代)
- 日当、出張手当、プレミアムクラス料金
専門家によるコンプライアンス・ノート
補助事業計画に基づく販路開拓を行うための出張である旨を記載した出張報告の作成等により、必要性が確認できるものが補助対象となります(補助事業計画に明記されていない出張の場合は、補助対象外となります)。通常の営業活動に要する経費とみなされる場合は対象外となります。
⑥ 新商品開発費
試作品や包装パッケージの試作開発にかかる費用です。
⭕️ 補助対象となる経費
- 試作品開発のための原材料費、部品購入費
- 新商品の包装パッケージ、ラベル、容器のデザイン料・試作費用
❌ 補助対象とならない経費
- 販売を目的とした製品・商品の製造・量産にかかる費用
- 試作開発の過程で使い切らなかった原材料
専門家によるコンプライアンス・ノート
この区分の本質は「試作(プロトタイピング)」に特化している点です。「試作」と「量産」は明確に区別されます。原材料費を計上する場合、「受払簿(任意様式)」を作成し、購入した原材料の受け入れ、使用、残量を正確に記録・管理する義務があります。
⑦ 借料
事業遂行に直接必要な機器や設備のリース・レンタル費用です。
⭕️ 補助対象となる経費
- 補助事業遂行にのみ使用する機器・設備のリース、レンタル料
- 販路開拓イベント等で使用する会場のレンタル費用
❌ 補助対象とならない経費
- 既存の事務所・店舗の家賃
- 補助事業以外にも使用する機器等のリース・レンタル料
専門家によるコンプライアンス・ノート
所有するのではなく「借りる」ことで、初期投資を抑えつつ計画を実行するための経費です。既存事務所の家賃は対象外ですが、販路開拓計画の一環として「新たに事務所等を賃借する場合」は対象となり得ますが、審査は厳格です。
⑧ 委託・外注費
自社で実施困難な専門業務を外部に依頼するための費用です。
⭕️ 補助対象となる経費
- 店舗の改装、バリアフリー化工事、看板設置等の外注工事
- インボイス対応のための専門家(税理士等)への相談費用
❌ 補助対象とならない経費
- 不動産の取得にあたる費用(建物の増改築等)
- 自社の通常業務(経理代行など)の外注
専門家によるコンプライアンス・ノート
委託・外注においては、業務内容と金額を明記した「契約書」の締結が必須です。特にコンサルティングのような無形のサービスの場合、具体的な「報告書」がなければ成果が確認できず、対象外とされるケースが多いため注意が必要です。
これはNG!全区分共通の対象外経費
以下の経費は、どの区分でも補助対象となりません。申請前に必ず確認しましょう。
事業運営コスト
- ❌販売商品の仕入費用
- ❌事務所の家賃・光熱費
- ❌電話・ネット等の通信費
汎用的な物品
- ❌パソコン、タブレット、スマホ
- ❌文房具などの消耗品
- ❌自動車、バイク、自転車
不透明な取引
- ❌自社や親族との取引
- ❌オークションでの購入
- ❌10万円超の現金払い
付随的な費用
- ❌銀行の振込手数料
- ❌消費税・印紙税など
- ❌申請書類の作成費用