採択される申請書の設計図

様式2と様式3の戦略的論理構成ガイド

そもそも「論理構成」とは?

一言でいうと、「話のつじつまが合っているか」ということです。申請書全体を一本の映画や物語だと考えてみてください。

【起】主人公の紹介と、直面する問題(様式2の前半)

「私たちの会社はこういう者です(企業概要)。今、こんな『壁』にぶつかっています(経営課題)。しかし、世の中にはこんな『チャンス』が広がっています(市場の動向)。」

【承】主人公の決意(様式2の後半)

「私たちは、競合にはないこんな『武器』を持っています(自社の強み)。だから、この武器を使って、あのチャンスを掴み、壁を乗り越える、こんな『戦略』を立てました(経営方針・目標)。」

【転・結】課題解決への具体的な行動と、輝かしい未来(様式3)

「その戦略を実行するために、補助金を使って『具体的にこう動きます』(HOW:事業計画)。その結果、こんなに素晴らしい『成果が出ます』(RESULT:補助事業の効果)。」

このように、「壁」→「チャンス」→「武器」→「戦略」→「具体的な行動」→「成果」という一連の流れに、矛盾や話の飛びが一切なく、すべてが線で繋がっている状態。これが「論理構成がしっかりしている」ということです。

なぜ「論理構成」が採択の鍵なのか?

小規模事業者持続化補助金の申請において、採択を勝ち取る計画書は、単に各項目が埋められているだけではありません。そこには、審査員を納得させる強力な「論理構成」が存在します。様式2と様式3は別々の書類ではなく、貴社の成長物語を語るための「第一章」「第二章」です。この二つの章がどう連携し、一つの壮大な物語を形成するのか、その設計図を解説します。

第一章:経営計画書(様式2)- 事業の「なぜ?」を語る物語

1. 企業概要

【問い】貴社は何者か?

事業の現状と、乗り越えるべき「経営課題(壁)」を明確に提示します。これが物語の出発点です。

2. 市場の動向

【問い】どのような外部環境にいるのか?

データに基づき、自社が狙うべき「市場の機会(チャンス)」を特定し、課題の客観的な裏付けとします。

3. 自社の強み

【問い】なぜ貴社が解決できるのか?

市場の機会に対し、自社が持つ「有効な武器(強み)」を示し、事業の実行可能性を証明します。

4. 今後のプラン

【問い】どう課題を解決し、目標を達成するのか?

これまでの分析を統合し、強みを活かして機会を掴む「戦略(経営方針)」を策定します。

この「壁 → 機会(チャンス) → 強み → 戦略」という一貫した論理構成が、物語に説得力を与えます。

物語の転換点:様式2から様式3への「黄金のつながり」

様式2
(経営計画)

WHY

なぜ、やるのか?
(未来の設計図)

様式3
(事業計画)

HOW

どう、やるのか?
(具体的な行動計画)

様式2で描いた「未来の設計図(WHY)」を、様式3で「具体的な行動計画(HOW)」に落とし込みます。この二つが強力に連携することで、計画は単なる夢物語から、実現可能な事業へと昇華します。

連動マップ:二つの章を完全につなげる

【様式2】2. 市場の動向

市場や顧客の変化という「追い風」

【様式3】2.② 背景・目的

「今」やるべき客観的根拠となる

【様式2】3. 自社の強み

他社にはない「武器」

【様式3】2.③ 取組内容

「武器」を活かすから成功する

【様式2】1. 経営課題

乗り越えるべき「壁」

【様式3】2.② 背景・目的

補助事業が「壁」を突破する力となる

【様式2】4. 経営目標

目指すべき「未来の姿」

【様式3】4. 補助事業の効果

補助事業が「未来」への確実な一歩となる

申請書の作成についてワンポイントレッスン

分析と成果の可視化

市場の動向(様式2)

折れ線グラフで市場の成長性を示し、「なぜ今なのか」という事業の好機(チャンス)を客観的なデータで裏付けます。

強みの自己評価(様式2)

比較表で自社と競合の強みを客観的に分析し、どの武器で戦うべきかを明確にします。

強みの項目 自社 競合A社
品質 ★★★★ ★★★☆☆
価格 ★★★☆☆ ★★★★★
顧客対応 ★★★★★ ★★★☆☆
技術力 ★★★★ ★★☆☆☆
立地 ★★☆☆☆ ★★★★★
ブランド認知度 ★★★☆☆ ★★★★

事業効果の提示(様式3)

補助事業によって売上や顧客数がどう変化するのか、具体的な数値目標をグラフで示し、投資価値をアピールします。

【補足】この可視化の表現はあくまでも一例です。
ご自身のビジネスや置かれている状況説明に応じて「伝わりやすさ」「わかりやすさ」を念頭に表現してください。

提出前の最終セルフチェック

📝 計画内容のチェックリスト

一貫性

様式2の「壁」と様式3の「解決策」は直結していますか?物語に矛盾はありませんか?

具体性

「頑張る」ではなく、5W1H(いつ、どこで、誰が、何を、なぜ、どのように)で行動が描かれていますか?

客観性

希望的観測ではなく、データや根拠に基づいた目標設定になっていますか?

独自性

他社でもできることではなく、自社ならではの創意工夫が盛り込まれていますか?

📋 手続き上のチェックリスト

GビズIDプライム

アカウントは取得済みですか?有効期限は切れていませんか?

事業支援計画書(様式4)

商工会議所/商工会への相談は済ませ、発行依頼の締切を確認しましたか?

添付書類

公募要領を読み込み、必要な書類は全て揃っていますか?

電子申請

締切直前ではなく、余裕をもって申請を完了する計画ですか?

結論:一貫した論理構成の力で、未来を掴む

様式2で提示した課題に対し、様式3の補助事業が的確な解決策として機能し、その結果として様式2で掲げた目標が達成される。このブレない一本のストーリーこそが、審査員の心を動かし、採択、そして貴社の持続的成長へと繋がります。この設計図を元に、貴社の成功物語を力強く描き出してください。