
「自分の事業を立ち上げたい!」 その熱い想いを実現させるため、多くの人が「創業」という道を選びます。しかし、情熱だけで事業が続くほど、現実は甘くありません。特に「お金」の問題、とりわけ「自己資金」の準備を軽視してしまうと、夢への挑戦はスタートラインでつまずきかねないのです。
この記事では、なぜ自己資金がそれほど重要なのか、金融機関からの融資とどう関わるのか、そして今すぐ始めるべき準備方法までを、具体的に解説します。
事業運営に不可欠な「3種類のお金」
まず、事業を始め、軌道に乗せるまでには、大きく分けて3種類の資金が必要になることを理解しましょう。
- 開業資金 店舗の契約費用や内装工事費、PCや専門機材の購入費など、事業をスタートするために最初に必要となる資金です。
- 運転資金 商品の仕入れ代金、事務所の家賃、広告宣伝費、従業員への給与など、日々の事業運営を続けていくために不可欠な資金です。
- 当面の生活費 そして、見落とされがちですが最も重要なのが、この生活費です。これは事業のためではなく、あなた自身とあなたの家族が生活していくためのお金です。
なぜ「生活費」の確保が最優先なのか?
創業後の収入は不安定。「収入ゼロ」の期間も覚悟する。
会社員時代とは異なり、創業後の収入は事業の状況によって大きく変動します。特に事業が軌道に乗るまでの数ヶ月間は、売上が立たず「収入ゼロ」という事態も十分に考えられます。
もし手元に生活費の蓄えがなければ、「今月の家賃が払えない」「家族を養えない」といった不安から、事業に集中できなくなってしまいます。この精神的なプレッシャーは、冷静な経営判断を鈍らせる大きな要因となります。
だからこそ、事業用のお金とは別に、最低でも半年分の生活費を自己資金として確保しておくことが、あなた自身の心を守り、事業を継続させるための「命綱」になるのです。
融資のプロはここを見る!金融機関と自己資金の関係
「事業資金は、日本政策金融公庫などから融資を受ければいい」と考える方も多いでしょう。もちろん融資は強力な武器ですが、その申し込みにおいても自己資金は極めて重要な役割を果たします。
自己資金は「事業への本気度」の証明
金融機関が融資を審査する際、申込者がどれだけ自己資金を準備しているかを厳しくチェックします。なぜなら、コツコツと貯めてきた自己資金の額は、「この事業にかける本気度」や「計画性」を客観的に示す何よりの証拠だからです。
明確な基準はありませんが、一般的に事業に必要な総資金のうち、少なくとも2割は自己資金で準備しておくことが望ましいとされています。
要注意!通帳の「見せ金」は通用しない
融資の申し込み直前に、どこかから一時的にお金を借りて通帳に入れ、自己資金が多くあるように見せかける「見せ金」。これは絶対にしてはいけません。
金融機関は、通帳の残高だけを見ているわけではありません。過去に遡って入出金の履歴を確認し、「そのお金が、どのようにして準備されたのか」というストーリーを検証します。
急に多額の入金があれば、その経緯について必ず説明を求められます。もし親族から援助してもらったお金であった場合、それは原則として「自分で貯めた自己資金」とは見なされず、評価が下がってしまう可能性が高いので注意が必要です。
夢を語る前に、まず現実を。今すぐ始める準備プラン
厳しい話に聞こえるかもしれませんが、これがあなたの夢を本気で守るための、一番大切な準備です。
【今すぐやるべきこと】 ✅ ステップ1:自分の「1ヶ月の生活費」を正確に把握する 家賃、食費、水道光熱費、通信費、保険料など、毎月何にいくら必要か、まずは現実を直視しましょう。
✅ ステップ2:目標金額(生活費 × 6ヶ月分)を設定し、貯蓄計画を立てる 目標額が決まれば、あとは毎月いくらずつ貯蓄していくか計画を立てるだけです。給料から天引きする「先取り貯金」などが効果的です。
【結論】
創業を成功させ、事業を長く継続させるために、まずは盤石な土台を築きましょう。
- あなた自身が生きるための「生活費」を最低半年分
- 事業を始めるための「開業・運転資金」のうち最低2割
この2つを自己資金で準備すること。 それこそが、あなたの夢ある事業を守り、未来へ繋げるための確実な第一歩となるのです。