
創業者を力強く支援する「小規模事業者持続化補助金<創業型>」。最大200万円(特例適用で250万円)という補助上限額は非常に魅力的ですが、多くの希望者が見落としがちな、申請資格に関する“最大の盲点”があります。
それは、この補助金は「これから事業を始める人」ではなく、「すでに事業を開始した人」を対象としているという点です。
「開業届を出したから大丈夫」と思って準備を進めると、申請段階で「対象外」と判断されかねません。今回は公募要領を基に、この最も重要な注意点を徹底解説します。
盲点1:「創業予定者」は対象外!公募要領の明確なルール
公募要領には、補助対象にならない事業者の例として、はっきりとこう記載されています。
○申請時点で開業していない創業予定者(例えば、既に税務署に開業届を提出していても、開業届上の開業日が申請日よりも後の場合は対象外)
さらに、注釈にはより厳しい一文があります。
※2: 既に税務署に開業届を提出していても、申請時点までに事業を開始していない場合も補助対象外となります。
これはつまり、たとえ法律上の「開業」手続きを終えていても、実際にビジネスが稼働していなければ、この補助金のスタートラインには立てないということです。「事業計画が固まったから、この補助金でスタートダッシュを切りたい」という考え方では、要件を満たせないのです。
盲点2:「事業を開始した」ことを証明する鍵は「売上台帳」
では、「事業を開始している」状態とは、具体的に何を指すのでしょうか。 これも公募要領の「申請に必要な書類」に答えがあります。決算期を一度も迎えていない事業者の提出書類として、以下の記載があります。
○決算期を一度も迎えていない場合のみ、申請段階で開業以降売上が発生していることを証する売上台帳等(任意様式)の写しを提出してください。
つまり、補助金を申請する時点で、少なくとも1円以上の売上があり、それが「売上台帳」に記録されている必要がある、ということです。まだ顧客がおらず、売上がゼロの状態では、「事業を開始している」とは見なされません。
盲点3:「資金繰り」の罠 – 補助金は”後払い”、その間の運転資金はありますか?
これが、創業者にとって最もシビアな盲点です。補助金は、採択されたらすぐに入金されるわけではありません。
【補助金入金までの流れ】
- 事業者自身が、補助対象経費の全額を自己資金で支払う
- 補助事業(計画した販路開拓など)を完了させる
- 実績報告書を提出し、事務局の検査を受ける
- 検査で承認されてから、ようやく補助金が振り込まれる
例えば、補助対象経費として150万円の広告宣伝や設備導入を計画した場合、採択されても、まず自社で150万円を支払う必要があります。補助金(この場合100万円)が振り込まれるのは、事業が完了し、すべての手続きが終わった数ヶ月後です。
創業初期は、売上が安定しない中で家賃や仕入れなどの支払いがあり、資金繰りは特に厳しい時期です。その期間の運転資金に加え、補助金事業の経費を全額立て替えられるだけの資金計画がなければ、せっかく採択されても事業を実行できず、最悪の場合「交付取消」となるリスクがあります。
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まとめ
小規模事業者持続化補助金<創業型>は、事業の「立ち上げ資金」ではなく、すでに産声を上げた事業の「成長を加速させる資金」の補助金だと捉えてください。
また、費用支出から実績報告→補助金交付までには時間を要する為、その間の資金繰りを考える必要があります。特に多額の金額を要する補助企業の場合は要注意。